コンビニ人間/村田沙耶香
今更ですがコンビニ人間を読みました。これから読む方にはネタバレがあるかと思いますのでご注意ください。
一気に読んでしまったけど、途中何度も胃がむかむかしてしまった。その理由を読み終わった後に考えてみた。作中には、自分は普通側の人間で、普通であることが人間として当たり前だと思っていて、自分たちが決めた普通の場所にいることで安心していて、異質なものが現れると排除するか、こちら側に連れてくることでまた安心する、ということをまったく無自覚に繰り返している人々が大多数に描かれている。この多数派たちは、主人公が苦しんでいると勝手に思い、わかりやすい形の苦悩を想像する。その方が理由が理解できて安心するから。印象的だったのは、皆、「変なものには土足で踏み入ってその原因を解明する権利があると思っている」、という文章、きっと本当にそうなんだと思う。
途中から自分のことは棚に上げて、主人公や社会に対して徹底的に嫌な言葉で悪口を言うSさんが出てくる。彼の言葉は自分のことを言われてるわけではないのにとってもしんどかった。主人公はどんなに嫌な言葉で罵倒されてもまったく揺さぶられない。私がしんどかったのは、きっとこれまで生きてきて知らぬ間に私の中にできあがった「普通」があって、その普通から外れてしまった経験と、それによって受けた他者からの視線や批判によって受けた傷跡がズキズキしたからではないかと思った。Sさんは、主人公とは違ってまったく普通の人なんだけど、普通なはずなのに普通の仲間に入れなかった人で、自分がこんな目にあったのは自分のせいではないという原因と理由をあちこちから引っ張てくる。だけどその動機が、実は普通の仲間に入りたい、だということに気づいていなくて、そこに「普通」の力というか恐ろしさを感じた。
普通という言葉を使いすぎて、だんだん「普通」が何か確かな、形あるものではないのだと感じられるようになる。「普通」は人々が日々特別に意識するものではないんだけど、「普通はさ~」というセリフは確かに子どもの頃からよく聞いたし、よく使ったセリフだった。そのうち「普通」でないことが怖くなり、実際に「普通」でないと排除されたり、矯正させられたりすることを繰り返し、その人たちの恐怖と安心から「普通」がまた作り上げられていくのだろう。
読み終わった後はなんだかもやもやしたけど、自分の気持ちをまとめてみると、なんだかすっきりしました(笑)。「安心」というのは、人間が生きていく中で本当に重要なものなんだと思うけど、それだけじゃ面白くないって思うのは私だけじゃないと思う。少なくとも、他人に自分の「普通」を押し付けたりしない、そんな人間になりたいと思いました。
Minmin